#35 ケニアで引きこもりになった話
僕は、去年アフリカのケニアを訪れたことがあった。
特にこれといって目的があったわけではなかった。
昔、日焼けで黒くなった友達に、「ケニア人」と言って茶化したことがあったくらいで、ケニアとは全く縁はなかった。
到着して町を歩いていると、これまでの旅では感じたことのないような嫌悪感のようなものを感じた。
その不快な感じの正体は、ケニア人自身にあった。
彼らの目玉をおっ広げて、ガン見してくるところがたまらなく嫌だったのだ。
すれ違う時も、僕の背中が見えなくなるくらいまでガン見してくる。
ケニア人は目が大きくシュッとした顔つきの人が多いため、その顔でのガン見はとても怖かった。
また、彼らのほとんどは僕を見かけると、「チャイナ!シュシュ」と言って武道の真似をして声をかけてくる。
当時はその行為がたまらなく嫌だったので、大体無視していたけれど次第に我慢できなくなっていた。
次第に外出の回数が減っていたが、お気に入りのレストランだけはあった。
店の人は女性だったので、そこにいるときだけは怖いガン見からは解放されていた。
しかしそこに、車椅子に乗った婆さんと、それを引いている青年に物乞いされ、もう外には出ないと誓った。
物乞いに関しては、別に嫌いだからではない。
これまでの経験で、物乞いにお金を求められることがたくさんあったから慣れているし、時には渡すこともある。
だけど今回の物乞いに関しては、店の中に入って、食事の邪魔をしてまで物乞いをしてくる姿勢が許せなかった。
それをただ見ている店の人も許せない。
こうして僕はケニアで引きこもりになってしまった。
最終日に空港に着いたときは、涙が出るくらい嬉しかったのを覚えている。
ケニアの旅はとても良い経験だと思っている。
海外に行っても良いことも悪いこともあるし、慕われることもバカにされることもある。
今後僕が海外での生活をしていくうえで、こういうことを一々気にしていては生活できない。
寛大さや柔軟性を持ち、気にしないでいることが海外でうまく生活するコツなのかもしれない。
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