#27 人違い
2年前インドのコルカタという場所に行った際、たまたま近くのスタジアムでインドのプロリーグの試合があったので、見に行こうとした時があった。
その試合は、チケットが完売しており、自分を含めたくさんのインド人サポーターが入口ゲートに溢れていた。
スタジアムの裏ではフェンスをよじ登って中に入ろうとするインド人が多くいたが、馬に乗った警察が厳しく制圧していた。
スタジアムの中では、爆竹や打ち上げ花火とやりたい放題で、スタジアムの中も外も大騒ぎだった。
試合後、サポーターの一人が声をかけて来てくれて、スタジアムの中に連れてってくれた。
中ではサポーターがピッチに入り大騒ぎしていた。
その光景に感動していると、サポーターが「お前、ユタの友達か?」と聞いてきた。
結構何度も聞いてきたので、とりあえず「そうだよ」と答えた。
すると、サポーターは僕をクラブハウスに連れていってくれた。
クラブハウスの中では、試合のMVP選手の表彰やインタビューが行われていて、記者たちの熱い熱気が伝わってきて、自分の場違い感をすごく感じた。
しばらくすると、この中に入れ、ロッカールームに入れられた。
中では、選手たちがミーティングをしたり着替えたりしていて、そこに日本人選手がいた。
僕が声をかけると、彼は驚いた顔で挨拶した。
友達と伝えられて待っていたら、知らない日本人が来たのだから驚くのも当然だ。
そして今だから言えるのは、僕もすごく驚いた。
なぜなら、僕も彼のことは全く知らなかったから。
もっと言ううと、僕はこれから会う人は「遊佐克美」だと思っていた。
遊佐選手は僕が知っているインドリーグでプレーする日本人だ。
「ユサ」をインド人は間違って、「ユタ」と言っているのかと思っていた。
せっかく来てくれたからごはんに行こう、ということで食事に連れていっていただいた。
道中、知らないで声をかけてきたと悟られないように、彼の正体をインターネットで調べた。
彼の名前は、「木脇悠太」
当時インド2年目の選手だった。
木脇選手と食事中に、将来何がしたいかという話になった。
当時、僕は途上国でサッカーを教えたいと答えたが、そんなことで食っていけるのかなど厳しく言われた。
お金の面や環境の面での過酷さを、よくわかっている彼だからこそ言える言葉は重みがあり、説得力があった。
その貴重な対談を通じてたくさんの学ぶことがあった。
現在、僕は海外でプロサッカー選手を目指している。
2年前の経験は、今の自分に少なからず影響を受けていて、いつか同じプロサッカー選手として同じ目線で話したいと思っている。
そして、あの時はありがとうございました。僕もプロサッカー選手になりました、と伝えたい。
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